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ペールブルーに潜む

天空のカフェは毎日盛況で、人気のケーキは昼には品切れになることもある。
甘味がメインだからか女性客が多く、騎空艇に乗っているときの賑わいとは少し違う。
華やかな声がよく響いていた。
ふと外を見れば、空が暗くなり始めている。
客もまだ残っているので、ランプに明かりを入れていく。
空になった食器を洗い場に持って行くと、よく動く二人、ルリアとビィがいた。
忙しくともにこにこと客をもてなし、楽しそうにしている。
「今店内にいる客で最後だな」
「えへへ、今日もいっぱいお客様が来てくれましたね」
「なぁ、オイラが最初思ってたよりもハードだぜ」
「そうだな、あの方々のおかげだろう」
厨房でケーキを作っている四騎士とルシフェル。
誰かがカフェに姿を見せれば、女性陣が落ち着かなくなる。
視線はケーキではなく彼らに向けられた。
そういった要素も人気の理由だろう。
騎空団になぜこんな依頼がされたのかと思っていたが、十分な成果を出しているだろう。
サンダルフォンとしては、存分に珈琲を振る舞えるので満足している。
できればルシフェルにはあまり外に出てほしくないと思うが、楽しそうにしているので何も言えなくなっていた。
「友達に教えてもらった、って言ってた人も多いですよ」
「そうか、やはり口コミは侮れんな」
夏にアウギュステで屋台を開いたことを思い出す。
あのときは集客に苦労した。
「俺は倉庫で備品のチェックをしてくる、後は頼んでもいいか?」
給仕は終えているので、後は会計と片付けだ。
客が帰ったら掃除だなと考えつつ問えば、もちろんです!と元気な声を返された。


カフェの建物は光を存分に取り入れる設計で、どの席からも美しい空がよく見える。
特に力を入れているのは、最上部のテラス席だ。
そこに上がるための階段の下、ひっそりと目立たない扉を開くと、窓のない倉庫になっている。
ランプを持って入り、在庫のチェックと明日必要な物を出していく。
リストと見比べ確認しつつ、かごに詰めていると。
ふ、と空気が揺れた気がした。
不思議に思いつつ立ち上がり扉を見る。
誰かが来れば声をかけるだろうし、扉が開けばさすがに気付くはずだ。
気のせいかと視線を戻せば。
「こっちだよ」
唐突に響いた声に、はっと顔を向ける。
そんなことはないと思いたかったのに。
「ベリアル……」
なぜ、と疑問すら浮かばない。
木箱の上、優雅に脚を組む姿を見つめる。
「ご機嫌斜めだね」
「貴様がいるからだ」
この狭い空間で攻撃すれば、建物ごと破壊してしまうかもしれない。
まだ客もいるはずだ。
この場で殲滅してしまいたいが難しいだろう。
「そうカッカするなよ、少しオレと遊ぼうぜ」
「そんな暇などない」
ゆったりとした動作で近付いて来るが、睨み返すことしかできない。
「ここで暴れたらみんなに迷惑かかるね」
そっと囁くような声に舌打ちが漏れそうになる。
感情を乱せば相手の思う壺だ。
「まぁオレもルシフェルには会いたくないから静かにしてよ」
「あの方の手を煩わせるまでもない」
「そっか、じゃあキミが相手をしてくれるのかな」
する、と首を撫でていく。
体が近付き、無意識に引いた腰を掴まれてしまう。
「っう」
頬や鼻先に口づけられて、ぎゅっと目を閉じれば笑う気配がする。
「献身的だねぇ、涙が出そうだ」
笑い声が聞こえ、首筋に痛みが走った。


ランプの明かりは心許なく、見上げる天井は暗い。
「よく似合ってるねサンディ」
ベストの襟をそっと撫でられた。
「ただの制服だ」
「禁欲的なところがいい、乱してぐちゃぐちゃにしてやりたくなる」
ベルトの外れる音がして、シャツの中に手が潜り込んだ。
肌を撫でる指先はなめらかで、ほんの少し冷たい気がする。
「っん」
「中身がこんな淫らなのもたまらない」
腹を撫で回した後、スラックスを太股辺りまで下げる。
外気に触れる感触に身震いした。
下半身にじっと視線を落とされる。
「これ、も似合ってるよ。オレの用意した物を身に付けてくれてうれしいね」
「は」
「デザイナーだからね。こっそり紛れ込ませておいたんだ」
する、と下着の縁をなぞる。
それは淡い水色で、柔らかなレースでできていた。
「ルシフェルの瞳の色に近いと思わないか?」
「ふざけるな、そんな不敬なことを……!」
「というかよく疑いもせずにはいてるよね」
呆れた声に言い返すことができない。
布面積が少ないなとは思ったのだ。
しかし比べる対象がないので、そういう物だ、と深く考えることをしなかった。
「でもほら、こんなヒップライン丸出しの白いパンツなんだから、インナーに気遣わないとまずいってわかるだろ?」
そんなの知るか、と突き放したいが、何と返すのが正解かわからない。
「でもこんなのはいてるなんて誰も思わないだろうね」
フフ、と笑いながら指がレースの上を撫でていく。
普段触れることのない場所への刺激は鮮烈で。
「ふっ、ぅう」
「オレの手にこんなに簡単に反応していいのかな?」
「うるさい!」
「まぁ、これもルシフェルの設計……」
咄嗟に伸びた手が、男の頬を張っていた。
じわりと手のひらが痛む。
「フフ、ごめんごめん、他の名前出されたら嫌だったな」
違う、と声を出す前に、触れる手に力がこもった。
上下に扱くようにされ、腰が跳ねる。
溢れそうになった声を堪えるために唇を噛んだ。
「あぁ、濡れてきた」
言われずとも感触でわかってしまう。
「勃起させて……下着の意味がないじゃないか、恥ずかしくないのかい」
「う、るさい」
「もうちょっと抵抗してくれないと楽しくないよ、サンディ」
ぬちゃ、と音がした。
下着の隙間から覗く先端を指が擦る。
「っぅ、や」
ゆるりと首を振り、後ずさる。
「サンディそういうとこあるよね」
「ぇ」
ぐっと強く掴まれる。
「ぁ、あ、やめっ……」
絞るように上下に動かし、時々潜り込む指が直接触れた。
先ほどまでのからかうような手つきとは違い、明確な意図を持って動く。
「ひ、あぁっ!」
ぐりぐりと指が先端を擦られ、堪える間もなく白濁を放つ。
人に似せ作られたそれは、何も生み出さない。
「すごいね、たくさん出たじゃないか。ルシフェルに相手して貰ってないの?」
吐き出した液体を指で弄びながら笑う。
睨みつければ、軽薄にごめんごめんと告げた。
当たり前だが誠意など欠片もない。
「つっこみたいならさっさと入れればいいだろう、俺のことは放っておけ」
幾度繰り返してもその感覚は慣れない。
抵抗しても結果はいつも同じだった。
ならばさっさと終わらせてしまえばいい。
精一杯の虚勢だと自覚しながら口にすれば、へぇ、と口元を緩める。
「そうか、じゃあスピーディにイこうじゃないか」
気付けばぐるりと視界が反転し、固い床に頬を押しつける。
視線の先は薄暗い。
「ま、て」
腰を掴まれ、尻を突き出すような格好にされた。
スラックスは膝の辺りにまとわりつく。
「キミが早くって言ったんだろ」
面積の少ない下着は、丸い尻を剥き出しにしていた。
申し訳程度のレースを指が撫でる。
「ぅ、ぁ」
「ザラザラする?」
穴の上を執拗に指が往復する。
時折深く入り込み、粘膜に擦れた。
柔らかいと思っていたレースの刺激が強い。
「あぁ、そうだった早くするんだったか」
満足したように笑い、取り出した油を狭間に垂らす。
下着をずらし、指が穴にねじ込まれた。
「っひ、ぁ」
「早くしたいなら、ほら、キミも協力しないと」
「う、や」
「力抜いて、ね?」
甘ったるい声を注ぎ、増やした指を左右に開く。
「ぁ、あぁぁ」
「イイ子だサンディ」
うなじに唇が触れ、きゅう、と指を締め付けた。


背後から犯され、あぁ、獣みたいだと他人事のように考える。
「っは、ぁ……」
体内に侵入するそれは長大で。
「あー、イイよ、気持ちいいねサンディ」
腰を押しつけ、深く入り込む。
固い床に爪を立てれば、指先が痺れた。
「っう」
薄いシャツ越しに背中を撫でられ、無防備な姿に気付き悲鳴が漏れそうになる。
「はは、怖い?」
執拗に背に触れる。
爪に切り裂かれるような気持ちになった。
「かーわい」
笑い混じりの言いながら、幾度も腰を打ち付けられる。
中を擦る感触は痛みが麻痺したように快楽へと変わっていく。
萎えかけた性器は再び腹に付くほど反り返っていた。
「ん、んんっ、ぁ……」
達してしまいそうになったとき、ふと男が動きを止めた。
「は、ぁ、なに……」
振り返ろうとすれば、ブチブチと音がし、体液を吸った下着が床に投げ捨てられた。
元の色はもうわからない。
破るのなら最初から脱がせればよかったのに、とどうでもいいことを考える。
「もういらないだろ?」
擦ったり引っ張られたりと無体な扱いを受けたそれは、破らずとも使い物にならなくなっていた。
いらない、といえばいらないけれど。
明日からどうすればいいのだろうか。
「ほら、ちゃんと集中して」
ぱん、と尻を叩かれ体が震えた。
中の物をキツく締め付けてしまう。
「っう、ぁ」
「イイね、痛いのが好みだったとは知らなかったよ」
ぱぁん、とまた高い音が響く。
「やめ、ぁ、あ、ぁぁあ……っ!」
粘膜が擦れ、肌がぶつかる。
耳に届く音が混じり、訳が分からなくないまま達していた。
「あぁ、出すよ、サンダルフォン」
わざとらしく低く囁いて。
どろどろと体内に放出される。
サンダルフォンと同じ、何も為さない液体が腹を満たしていく。
「ん、ふぁ……」
萎えたそれが抜け、脚を液体が流れる感触に眉を寄せた。
制服は汚されたのに、上半身はあまり乱れていないことに複雑な気持ちになる。
「サンディ」
すり、と頬を撫でた後顔が近付いてきた。
ぼんやりと見返せば唇を塞がれる。
「ん」
逃れようと首を振るが、すぐに顎を掴まれた。
軽い音を立てながら幾度か繰り返し、唇を舐められ力が抜ける。
「ぁ」
滑り込んだ舌はぬるぬると動き、口内を荒らす。
噛みつこうという気力はもうない。
絡んだ唾液を飲み込めば、唇が離れていった。
「……甘い」
「フフ、さっき少し味見させてもらったんだ」
パティシエだからね、敵状視察さ。
そんな冗談みたいなことを告げてくる。
「……本当に、何をしに来たんだ」
こんなところで行為に至るなんて。
仕事だってまだ残っていたのだ。
自己嫌悪に陥り、固い床に体を預ければ、再び上からのしかかられて。
「キミに会いに来たんだよ」
やはりこの男の言葉は信用ならない。


は、とサンダルフォンが目を開くと、心配そうなビィが顔を覗き込んでいた。
「気が付いたみたいだね」
かけられた声に視線を向ければ、ルシフェルがすぐ傍にいた。
そこでようやく、サンダルフォンは自分の状況を確認する。
店内のソファに寝かされていたらしく、ルリアはもちろん、四騎士の姿まであった。
気が付いたならひとまず大丈夫か、などと会話をしていてめまいがする。
窓の外は完全に暗く、ずいぶん時間が経っているようだった。
「君の姿が見えないから探したんだ」
「そしたら倉庫で倒れてたんだぞ!」
体を起こすが、気遣ってかビィが頭に乗ってくることはなかった。
横に寄り添うようにするのがかわいらしい。
「何かあったのだろうかサンダルフォン。コアに不具合でも起きたのではないだろうか」
平坦な声だ。
しかし心配されているのだと今ならわかる。
「いえ、何も」
肉体はすぐに回復する。
残る違和感もすぐに消えるだろう。
大丈夫ですと答えながら、立ち上がって。
あぁ、と気付く。
これは、はいてないな、と。

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