・ベリアルがトナカイ。
・トナカイは役職名のようなもので、空飛ぶ何かの運転手兼サンタのサポート係。
・派遣されてきたり、個別に契約したり。
・どちらも人ではない。
・上司はルシフェル。
・18歳未満の方の閲覧はご遠慮願います。
day after tomorrow
年に一度身に着ける、赤い衣装。
見た目に反して意外と寒い。
ぎゅ、と手袋をはめた手で襟元を掴んだ。
「サーンディ、こっち終わったよ、もう出れる?」
荷台から飛び降り声をかけてくる。
今年のトナカイはとてつもなく優秀だった。
カーテンを開き、外を見れば真っ白な雪が降り積もっている。
空気を入れ換えるため窓を開くと、冷え切った空気に肺が震えた。
山奥に一人暮らしているサンダルフォンの職業はサンタで。
人とは違う存在ではあるが、寒い物は寒い。
陽光に輝く雪をしばらく見つめ、窓を閉めた。
サンタ業は激務だ。
十一ヶ月はデスクワークをこなし、一ヶ月程をかけ物理的な準備する。
デスクワークはそれほど苦ではない。
子供たちの日頃の行いを精査したり、手紙を書いたりといったもの。
時間的な話をすれば、週休二日残業なしと言ってもいいくらいだ。
しかし、プレゼントの準備及び配達の当日は、想像に難くないだろう。
徹夜が続き、全てを終えた後は意識を失うように眠ることもある。
夢を壊すようで申し訳ないが、ソリには乗っていない。
なのでトナカイもいないのだが、役職として残っている。
運転手兼サポート役として。
サンダルフォンは本部に依頼し、一ヶ月だけトナカイを派遣して貰っている。
個人で年単位の契約をすることもあるらしいが、静かな暮らしを気に入っていた。
人好きなサンタの中には、町中で暮らす者もいる。
そろそろ今年のトナカイが来る頃だろうか、と壁に貼った予定表をぼんやりと眺めた。
扉を開けた先、全身黒尽くめの男が立っていた時の衝撃をどう表現すればいいかわからない。
しかもこの寒空の下、シャツの胸元はこれ見よがしに開いていた。
ジャケットも厚手の物ではない。
人でなくとも、寒い物は寒いはずだ。
外見が、関わりたくない相手だと示している。
できればお帰りいただきたく、サンダルフォンは扉をそっと閉めようとした。
が、ブーツの先が隙間にねじ込まれる。
「オイオイ、初対面からずいぶんな態度じゃないか」
軽薄な話し方が癇に障る。
見下ろす瞳は、己と同じ赤い色をしていた。
「いつだって人員不足なんだ、今更チェンジなんて無理だってわかってるだろサンディ?」
馴れ馴れしく名を呼ばれ苛立ちが増す。
お任せで派遣依頼を出していたことを初めて悔やんだ。
過去にやってきたトナカイは穏やかな人物が多く、何の問題も起きなかった。
これから一ヶ月、にやつくこの男と暮らすのかと思えば気分が沈んだ。
「よろしくサンディ」
差し出された掌を無視して背を向ける。
「寒いからさっさと閉めてくれ」
背後で扉の閉まる音を聞きながら、深いため息を吐いた。
あれから、もうすぐ一ヶ月。
結果として、その男、ベリアルは。
とても優秀なトナカイであった。
今年のノルマが過去最高値であったことに納得できるほどに。
むしろこの男が来ることを前提に課せられた数だったのかもしれない。
そう考えるととても複雑な気持ちになった。
幸い、徹夜は一度もしていない。
しかし、当日配る数を考えれば若干不安にもなる。
半ば無意識にラッピングを続けていれば、
「ココア飲む?」
響いた声にはっとする。
扉の向こうにベリアルが立っていた。
「予定前倒しできてるんだろ?休憩しようぜ」
にやにやと笑う顔はもう見慣れた。
からかうような口調も。
「……わかった」
仕上げにリボンの形を整え、作業部屋から出ることにした。
普段好んで飲まないココアは、程良い甘さになっていた。
そして迎えた、クリスマス当日。
余裕を持って準備を終え、出発したのだが。
優秀なトナカイの運転は最悪だった。
サンダルフォンは初めて乗り物酔いを体験した。
ぐったりと座席に沈み、これが罠かと納得する。
やはりそんな都合のいいトナカイなどいないのだ。
数をこなす為に多少無理な運転になるのはわかる、わかるが限度がある。
「どうしたのサンディ、イッちゃう?」
「……しね」
生理的な涙が浮かぶ。
笑う男を睨みつければ。
「あっは、ヤバい、達する」
軽く告げる声に、返す言葉はなかった。
死んだような瞳で窓の外を眺める。
眼下で煌めくイルミネーションが、憎い。
「ほら、もうちょっとだから」
上昇、加速、旋回、降下、急停止。
ぐらつく頭を抱えながら、荷台からプレゼントを引っ張り出した。
その後の、記憶がない。
帰宅したのは明け方だった。
荷台は空なのできちんと仕事は終えたのだろう。
冷え切った部屋に足を踏み入れ、暖房を入れなければと思うのに動けない。
近くにあったソファに倒れ込んだ。
「サンディ、脱がせてあげようか?」
する、と首を撫でられた。
冷えた指先に背筋が震える。
「……何でまだいるんだ」
契約は、プレゼントを配り終えるまで。
力つきたなら一晩泊まるのはかまわない。
しかし、目の前の男は信じられぬ程元気だった。
さっさと帰れと念じるように視線を向ける。
「イイ子にしてたんだ、オレにプレゼントをくれもいいんじゃないか?」
想像していなかった言葉に、一瞬応えるのが遅れた。
くだらない冗談かと思い至る。
「契約以外の報酬を渡す理由がない」
「確かに。じゃあ、一年イイ子にしていたサンディにオレがプレゼントをあげよう」
は、と。
問い返す前に手早くブーツを奪われる。
苦労して履いたのに、何故こうも簡単にと呆気にとられる。
ベルトに手が掛かかり、そこでようやく声がでた。
「ちょっと待て、何をする気だ!」
「何って、ナニだよ、わかるだろ?」
わからない。
止めようと伸ばした手は簡単にかわされ、ベルトを緩め、ボトムが下着ごと脱がされる。
冷えた空気に晒され、悲鳴のような声が漏れた。
足を開いた間に男が体を滑り込ませる。
上着が長いので局部が隠れているが、安心などできるはずもない。
羞恥でカッと体温が上がった。
「やっぱりイイ脚してるじゃないか、隠すなんてもったいない」
足首から、ふくらはぎに掌が滑る。
膝の丸みを撫で、手触りを楽しむように内ももにたどり着いた。
柔い皮膚を、爪の先が軽くひっかく。
「ほら、もうわかっただろう?」
ナニ、されるのか。
赤い瞳が細くなる。
逃げるべきだったのだ、この瞬間に。
それが最後のチャンスだった。
背後から、ぐちぐちと耳をふさぎたくなるような音が響く。
「っ、ひぁあ……」
器用にラッピングを施していた長い指が、内蔵を撫で、広げる。
途中逃げようと身を捩った結果、背を見せてしまった。
それはきっと手を抜かれただけだと、背中からソファに押しつけられて思った。
今は肘置きに縋りつき、乱れた息を吐き出すことしかできない。
「きついな、もしかしてヴァージンだった?」
バカにしたような響きに思考が戻る。
「何のことだ」
「うん?初めて?って聞きたかったんだけど」
「は、こんなこと、誰がするんだっ」
衣服を奪って動きを封じ、体を暴く。
辱めを受けているのは理解できた。
やはり第一印象の悪さは間違っていなかったのだと。
「定期的にルシフェルが来てるんだろう?」
憧れの存在の名を出され、体が強ばる。
きゅう、と指を締め付けていた。
「あぁ、やっぱりルシフェルに抱かれたかったか?なら、オレとお勉強しようぜサンディ」
「ちが、まっ……」
とんとんと腹の中をノックされているような気持ちになる。
サンタもトナカイも、人ではない。
繁殖を必要としないので、性交も行わないし、性欲も感じない。
一度も兆したことのない性器に指が触れる。
「中をいじられて勃ってきたな。たまらないだろう?」
掌が包み込み、ゆっくりと上下に動く。
滲ませた液体がくちゅりと音を立てた。
「んんっ」
敏感な粘膜を他人が触れるのは刺激が強すぎた。
一瞬浮かんだ憧れの人物が消えてしまう。
「イキたいか?必要ないのにちゃんと勃起するし、精子も出せるって、知らなかっただろう?」
前と後ろを同時に責め立てられ、頭がぼうっとする。
腰が無意識に揺れた。
「は、ぁ」
「でも、簡単にイクのはつまらないな」
指が引き抜かれるのに、ほっと息を吐き出した。
身体の力が抜け、ソファに沈む。
背後の物音など耳に入っていなかった。
「終わりなわけがないだろ、サンディ」
尻を左右に開かれる。
指が緩んだ穴を広げ、切っ先を押し当てた。
肘置きに身体が押しつけられる。
「っく、あぁぁっっ」
ひどい衝撃だった。
寝不足の頭が吹き飛びそうになる。
狭い粘膜を容赦なくこじ開け、体内に納めていく。
己を犯すそれを、サンダルフォンは知らなくてよかったのかもしれない。
顔の血の気が下がり、痛みから性器も萎えてしまう。
「あぁ、かわいそうに」
「触るな……」
「じゃあ自分でするか?それとも痛い方がお好みかな?」
受け入れた箇所はひたすら痛い。
腰を動かされれば叫びそうになる。
性器に指が絡むと、意識がそちらへと向いた。
「っんん」
馴染ませるようにゆるゆると腰を動かし、少しずつ埋めていく。
指で叩いていた箇所を擦り、嬌声を搾り取って。
けれど達するまでにはいかない。
指の隙間から先走りが零れ、ソファに落ちた。
背中に密着し重みがかかる。
悪くない、と男が耳元で囁いた。
「なぁ、オレと契約継続しようぜ」
「するわけないだろう、お前なんかと二度と会いたくもない!」
「じゃあ、一生このままでいようか」
そろりと下腹を撫でられる。
腹の中に収まったそれを意識してしまう。
「ひっ」
「ずっとつっこんだまま、中でいっぱい出してやろうな」
人じゃないって便利だよな、と。
笑う声が響く。
疲労が蓄積するサンダルフォンよりも、ベリアルの方が体力があるのだろう。
「奥、当たってるだろ?」
「あぅ」
緩く突き上げただけで、指先までびりびりとしびれるようだった。
快楽の逃がし方がわからない。
「でもコレが最後じゃない、もっと奥まで入れてみようか?」
「無理、無理だ、そんなのもう」
「無理じゃないよ、人間だってできるんだからキミができないわけがない」
くち、くち、と奥を突きながら。
身体を開かれるのがわかる。
「イイ子だね、サンディ、イケそうだ」
腰を掴んだ手に力がこもる。
逃げなければ、腹を突き破られると思った。
「ひっあ、無理、嫌だ、やめろっ」
震えは恐怖からで、ソファにしがみつき爪を立てる。
掌がゆるゆると肌を撫でた。
腰の動きは緩やかで。
「じゃあ、オレと永久契約、する?サンディ」
問う声はとても、優しかった。
「する、するからっ」
言葉の意味など理解できていない。
もうやめてくれ、と。
涙混じりの声しか響かない。
「これからよろしく、サンディ」
ぐ、とベリアルの手に力がこもった。
翌日。
こんこんと、来客を告げる音が響く。
この家を訪れる者は一人しかいない。
深い眠りに落ちたサンダルフォンは、気づくことがなかった。