いつの日か、かわいらしい少女と恋に落ちるのだ。
そう、夢見ていた。
双方向アルゴリズム
「人を呼び出しておいて熟睡とは随分偉くなったじゃないか、特異点」
ギシリ、と軋んだベッドにはっとして目が覚めた。
覆い被さるのは、美しい顔立ちの持ち主。
けれど随分不機嫌そうで。
自身の状況を思い出し、さぁっと血の気が引いていく。
戦闘後の昂りのまま、後で部屋に来て欲しいと伝えた。
性的なことに疎いサンダルフォンに、はっきりと情欲を示しながら。
なので、きちんと理解して部屋まで来てくれたのに。
シャワーを浴び、緊張が解けたのか。
ベッドに転がり、いつの間にかうとうとしていた。
詰られても仕方がない、このままお預けになる可能性もある。
体はまだ、熱を持っているのに。
「……疲れているのか」
「う、ごめん」
腰の辺りに跨がられ、思考はよからぬ方へと嫌でも向かう。
意識を逸らそうとするが上手くいかない。
「いや、それならば今日は俺がしてやろう」
そう言って、笑う姿が。
とても魅力的だった。
指先まで綺麗だ、と肌を撫でる動きを眺め思った。
シャツをめくり、するりと。
時折筋肉の溝を辿る。
その触れ方が楽しそうで、鍛えていて良かったと内心でほっとする。
緩いウエストに指を引っかけ、下着ごとずり下ろす。
反応しかけた性器をまじまじと見つめられ、一気に頬が熱くなる。
これまでは、ただサンダルフォンに触れたい、という欲求が強かった。
何かして欲しい、とは考えたこともなかったし、相手に強いることもなかった。
もしかすると、以前でも願えば叶えてくれたのかもしれない。
「あんまり見ないで……」
視線に耐えかね、訴える声が情けなく掠れる。
「あぁ、そうだな」
しかし、言葉は催促と受け取られたのか。
汚れなんて知らないような掌が触れた。
すり、と根本から擦られただけで一層硬くなってしまう。
だって、好きなのだ、サンダルフォンが、とてつもなく。
こんなにも簡単に反応してしまうほどに。
けれど相手は何とも思っていないようで、じわりと滲む先走りを不思議そうに掬う。
指先に纏わせ、すりすりと撫でられる。
「っぅ」
ずっと、夢見ていたのは可憐な少女だった。
それがいつの間にか、敵対していた天司とベッドに入っている。
他の誰かなど知らない、初めて他人に触れられる刺激は強すぎた。
「ほぅ、こうなっていたんだな、君は」
そう言って、ぺろりと唇を舐めた。
覗く赤に視線を奪われるが、サンダルフォンの体が傾いでいく。
言葉を発する前に、ぬるりとした感触に襲われる。
「っは、ぁ」
響く水音は唾液なのか、温かな口内に包まれていた。
根本をゆるゆると擦られながら、小さな丸い頭が上下する。
普段自分がどうしていただろう、何て考えられなかった。
裏筋を舐め、吸いつかれてすぐに限界が見えてくる。
「っ、ま、って待ってサンダルフォン、駄目だよ」
ほんの少しの欲望と、理性が衝突して。
肩に触れる手にはそれほどの力は入っていなかった。
ただ意識をこちらに向けて欲しくて。
ちらりと見上げる瞳は、何が駄目なのだ、と問うようで。
「イ、イッちゃうから、放して」
懇願に近い言葉は無視された。
扱く速度が上がり、登り詰めそうになる。
「ちょ、サンダルフォンッ」
肩をぐっと掴めば、ようやく解放された。
物寂しさもあるが、ほっとしたところで。
「構わん、飲んでやろう」
顔を上げれば口元は唾液と先走りで塗れていて、その淫靡さに目眩がする。
「うぅぅ」
すぐにでも達してしまいたい欲求と、もう少し堪能したい願望が渦巻く。
そんな悩みなど知る由もなく、再びぱくりと咥えられた。
温かさが心地いい。
たっぷりと唾液をまぶされたのか、先ほどよりも大きい水音が響く。
わざとだと思いながら、ずん、と腰が重くなる。
「本当に、出ちゃうよ」
手を伸ばし髪に触れれば、許容するようにこくりと頷いた。
それが、決定打だった。
耐えることをやめ、どろりと、口内へ注ぐ。
叫び出しそうになるのを、唇を噛んで耐えた。
根本を擦り、搾り取るように吸われて。
「……飲んだの?」
問いかければ、顔を上げた。
口元を指で拭うが、取り切れていない。
「君がいつもしていることだろう?」
何でもないように言われ、吐精後の脱力感もあってベッドへと沈む。
今後も頼めばしてくれるだろうか、とそんなことを考える。
足首にすり、と触れられ背筋が震えた。
「サンダルフォン……?」
ふくらはぎを撫で、太股へと上がってくる。
「今日は、俺がしてやると言っただろう?」
そう言って笑う姿は、やはり妖艶だった。
気怠い体で素早く動くこともできなかった。
逃げられなかったのは再び急所を捕まれたからだ、と。
言い訳のようなことを考える。
何に対する言い訳かもわからないけれど。
「あ、うぅっ」
油を纏った指が後孔に触れ、体内へと潜り込む。
意外とすんなり入るものだ、と思ったのは二度目のこと。
一度目は初めてサンダルフォンに触れた時。
不思議そうな表情をしていたのを思い出す。
異物感は確かに不思議な感覚だ、ととりとめもないことを考えていないと叫び出しそうだった。
サンダルフォンは普段あまり積極的ではない。
求めれば拒まれることはないが、受動的で。
人とは違うからな、と淡泊さを説明された。
それなのに、こんな日が来るとは想像もしていなかった。
意外にも嫌悪感はないことに驚く。
これまで自分の欲望を押しつけてきただけのようで恥ずかしい。
もしかして嫌だったのだろうか、と不安になる。
「平気か?」
ぐちぐちと粘着質な音が響く。
声を出せなくて頷けば、指が二本に増えた。
増した圧迫感に体が強ばる。
すると、宥めるように性器を擦られた。
「や、駄目だって、それ」
「気持ちよさそうにしているくせにか」
抜き差ししていた指が曲がり、ぐっと性器の裏辺りを押される。
「っひ、あ」
調べたのだから知っている、そこが快楽を促す場所だと。
擦られると体が震え、ぎゅっと指を締め付ける。
びりびりと痺れるような感覚に支配される。
けれどサンダルフォンはこれほど気持ちよさそうにしていなかった。
自分は下手くそだったのかと衝撃を受ける。
「人も同じだな、というか君がどこからか知恵を仕入れていたんだろう?」
ぐりぐり、と指で前立腺を押しつぶされる。
「ぁ、んっ、やぁっ」
思考が奪われ、情けなく声が漏れる。
無意識に逃れようともがくが簡単に抑え込まれた。
「嫌?俺のことは散々好き勝手してきたじゃないか」
「ぁ、あ、や、だったの?」
ぼろりと涙が零れ落ちた。
今までしてきた行為は、身勝手な、一方通行の感情でしかなかったのかと。
好きだと告げた感情を、少しは受け取ってもらえたと思っていたのに。
「うん?」
動きが止まったので、ようやくまともに声が出せるようになる。
「本当は、嫌だったんでしょ、だから、こんな」
酷い、と詰ればそれは自分が酷いことをしてきたことになるのだと思い知る。
相手が拒絶しないからと好きに振る舞っていたのだと。
自分の行いを思い起こせば情けなく、一度零れた涙が止まらない。
ずるりと指が引き抜かれたのはすぐだった。
「嫌だったら、最初からこんなことしていない」
呆れたような声と共に、傍にあったタオルでゴシゴシと顔を擦られる。
「っ、本当?」
ぎゅ、とタオルを持つ手を掴む。
「君は俺をなんだと思ってるんだ」
ぼやけた視界の先には、やはり呆れた表情で。
「……僕を突き落とした償い?」
「……いい性格だな、君は本当に」
そう言いながらも笑われて、胸がきゅんとしてしまう。
ぼんやりと眺めていれば、赤い瞳がすっと細くなる。
「さて、どうする?」
「どう、って」
見つめる先、膝の辺りまで着衣を下ろす。
腰を寄せられると互いの性器が擦れ、どちらも硬くなっていた。
「君が嫌ならいつも通りで構わない」
ぬるぬると刺激され、先ほどまで弄られていた箇所が疼く。
「俺の償いだと思ってるんだろう?」
他の誰でもない、彼に触れたくて。
そして、触れて欲しかった。
「い、いれてほしい」
震える声が零れ落ちる。
大丈夫と告げる言葉を鵜呑みにしていた。
「っう、あぁっ」
こじ開けられた体が悲鳴を上げ、大丈夫なわけがない。
それでも今更止めてくれと言えるわけもなく、拒否する言葉は我慢した。
額に浮いた汗を、冷えた指に拭われる。
「止めるか?」
気遣う声に、慌てて首を振る。
「大丈夫、だから」
「そうか、じゃあ、ゆっくりな」
言葉通り、快楽を拾えるようになるまで時間をかけて挿入された。
次第に馴染み、互いの体が密着する。
「あぁ、っん……」
後孔は痺れるようだが、前立腺を擦るようにされれば強い快楽を得る。
荒い息を繰り返し、甘ったるい喘ぎが漏れてしまう。
「イキそうか」
囁かれ、性器に指が絡む。
「あ、あぁ、待っ……」
根本から扱かれ、中もずるりと擦られれば、もう駄目だった。
びくびくと体を震わせ、サンダルフォンの手の内に射精する。
搾り取るようにされて身悶える。
「あ、やぁぁ」
ぐったりと、そのまま溶けてしまいそうになる。
額や頬に触れた唇が心地良い。
呼吸を落ち着かせていると、まだ硬いままのそれが抜けていく。
見上げた先、サンダルフォンの頬は朱に染まっていた。
それが無性に腹立たしい。
気だるさを放り投げ、がばっと起き上がった。
「っ、グラン」
「だって、まだイッてないでしょ」
驚くサンダルフォンを押し倒し、上に跨がる。
本当は自分がこうされたかったのだ、と思い出した。
上に乗ってくれるのかな、何て。
達した直後の体は、形がわかるほどぎゅうぎゅうと締め付けた。
「っぁ、あぁぁ……」
腰を上下させれば内壁が擦れて気持ちがいい。
思うまま動きながら、サンダルフォンを見下ろす。
耐えるように眉が寄り、こうやって追いつめるのも楽しいと思ってしまう。
「ね、出して、サンダルフォン」
腹を満たすのも悪くない。
「次は、僕に入れさせてね?」