18歳未満の方の閲覧はご遠慮願います。

ざっくり設定

・獣の血を引く人がこっそり暮らしている世界。
・出会いは高校生と大学生、で現在は大学生と社会人。同棲中。
・獣の姿に変化できるよーでもできない人もいるよー。
・それぞれ各地でコミュニティを形成しているのでは?
・グラン君は完全な狼に変化できる。
・サンダルフォンは不完全で翼だけ肥大して変化する。コンプレックスの塊。
・なんやかんやの末サンダルフォンの保護者ルシフェル(梟)はきっと無味無臭。

本能

帰宅してリビングへと向かえば、机で課題に向き合っているグランがいた。
「お帰り、サンダルフォン」
ぱっと顔を上げてにこにこと笑う。
鞄を置き、ただいまと返す声が小さくなった。
五感の鋭いグランには、些細なサンダルフォンの感情も伝わっただろう。
隠しきれない苛立ちを。
不思議そうに見上げる視線を無視し、ガッと胸ぐらを掴む。
「おいグラン、モフらせろ」
喧嘩腰の声とは裏腹に、言葉は随分と間が抜けていた。
「駄目だよ、月一回って決めたでしょ」
机の上を片付ける手を取め、ゆるりと首を振る。
グランは狼の血を引いており、姿を変えることができた。
まだ年若いが、その姿は雄々しく立派なもので。
コミュニティに属せば、リーダーにもなれるだろう。
何も恥ずべきことなどない、むしろ誇るべきなのに。
グランは恥ずかしいと言う。
サンダルフォンが内心、かわいいとも思っていることに気付いているからかもしれない。
「わかった、俺も翼を出してやる」
「本当に?」
「あぁ」
交換条件にするのはよくないとわかっている。
だがそれ以上に、気持ちがささくれ立っていた、抑えきれないほどに。
本来そんなもの持ち帰りたくはなかったけれど。
グランはサンダルフォンの翼を好んでいる。
互いに、見せたくはないが、相手の姿は見たい。
話し合いの末、月に一度相手の希望を叶えるという約束で。
今月は既に、寒い夜に抱き枕代わりになってもらっていた。
「それは僕の好きな時でいいの?」
「もちろん」
もう一押し、と思いながら頷く。
どこか企む気配はあったけれど、グランが酷な要求はしないだろう。
そんな風に甘く見ていた。
「わかった、いいよ」
頷き、立ち上がろうとしたグランの腕を掴む。
「え、何?向こうで着替えるから」
「ここでいいだろう、何だ、鶴の恩返しか」
「そうだよ、覗かないでね。じゃあ」
「グラン」
掴む手に少し力を込めた。
普段は年齢差もあり甘えたりねだったりなどはしない。
それを相手が不満に思っていることは知っていた。
元々そんな性格でもない。
彼が望むように、縋る瞳を向ける。
どこにも行くな、と。
ぐぅ、と喉が鳴る。
呆れたような、諦めたような。
わかったよ、と了承が下りたのはすぐだった。
サンダルフォンの手を外し、パーカーを脱ぎ捨てる。
ウエストに指を引っかけずり下ろす、その一瞬で。
目の前には灰褐色の毛並みを持つ狼が姿を現した。
軽く身を振り、サンダルフォンの目の前へとやってくる。
背を向けて、ラグの上でころりと横になった。
流石に腹を見せる気はないらしいが、背中は好きにしていい、と言っているようだった。
膝を付き、眉間を撫で、耳から背まで手を滑らせる。
出会った頃は痩せ気味だったが、食事とスキンケアの世話をすると成長期の体はしなやかな筋肉を付けた。
柔らかな毛並みはとても手触りがいい。
うっとりと瞳を細め、サンダルフォンも横になる。
「グラン」
名を呼び、頭の下に右腕を回す。
首の後ろに顔を埋めると陽向の香りがする。
抱き込むように左手を腹に回せば、ぴくりと反応するがあらがうことはなかった。
柔らかな被毛に指を埋める。
その牙も、爪も。
簡単にサンダルフォンの命を奪える。
力だって強く、逃れることなど容易だが、それをしない。
人を傷つけることのできない彼の優しさが愛しい。


抱きしめて暖かさを堪能していると、苛立ちは薄れていた。
巻き込んでしまった罪悪感はあるが、穏やかさは手放しがたい。
確認したことはないが、グランも触れることはそれほど嫌ではないらしい。
今も気を抜いて身を任せてくれている。
サンダルフォンもうとうとしかけ、手の動きがずれてしまった。
まずいと思った時には下腹部に指が滑っていて、腕の中ではっとしたように身を強ばらせる。
「グラン」
酷く甘い声が漏れた。
彼にはどう届くだろうか。
逃げようとする体を押さえ込み、すりすりと掌で撫でる。
こんなことをするつもりはなかったのに、体に熱が籠もるのを感じた。
「嫌か?」
問いかければ、抵抗が一際大きくなった。
やはり力は強く、腕の中から温もりが消える。
顔を上げれば、裸体のグランがそこにいた。
「何考えてるのっ!?」
全身を赤く染め、脱いだ服で下肢を隠す。
「君に触れたかった」
興味本位と言ったら怒るだろうか。
「だからって、あれはない」
言いながら服を着ようとするグランの腕に触れた。
「中途半端だろう、俺が責任を取ってやる」
腕を引き、ラグの上に座らせる。
服を奪い取れば、かわいらしい顔立ちに似合わぬ質量の性器が現れた。
反応しかけたそれを擦り、顔を寄せる。
「あぁぁ、もう」
ため息と共に、サンダルフォンの髪をくしゃりと撫でた。
「どうしたの、今日は」
口内に収まりきらないそれを、根本は手を使って愛撫する。
水音を立てながら頭を上下に動かせば、グランの息が上がっていった。
「気持ちいい、サンダルフォン」
まるで先ほどのお返しのように、顎や耳を撫でていく。
その心地よさに、体の力が抜けた。
「グラン」
口を離せば、唾液と先走りで塗れている。
いつも自分の中を満たすそれが。
想像し、腹の底で欲望が渦巻く。
「なぁ、出すなら俺の中で出したくないか?」


鞄に入っていたワセリンは、指の熱で柔らかく伸びた。
下着ごと脱ぎ捨て露わにした下肢は、グランに触れただけで反応を示している。
それに構いもせずに手を伸ばした。
ワセリンを馴染ませ、緩んだ隙間に指を入れる。
「はっ、ぁ」
自分で準備をすることはこれまでにもあったが、見られるのは初めてで。
まっすぐな瞳に映ることに興奮する。
浅い部分を探ると、きゅう、と指を締め付けた。
「グラン」
「うん」
じっと見ていたグランが、名を呼べば身を寄せる。
口付けて、シャツの上から胸を撫でた。
「ねぇ、狼の方がよかった?」
囁き、耳朶に噛みつく。
そのまま首や肩へと噛む位置をずらしていく。
「んん、ぁっ」
「どっち?」
問われながら、そんなことを言い出しそうな悪い知人を思い出す。
獣のままでヤッたかい、最高だろう?
難なく再生できる声にうんざりしかけると、見透かすように強く首を噛まれた。
「教えてよ、サンダルフォンがしたいことしてあげたい」
出会った頃のあどけなさはない、雄の顔をしている。
「……じゃあ、後ろからしてみるか?」
背を向け、緩んだそこを指で開き見せつければ。
一瞬で、体を押さえつけられた。
腰を掴まれ、先端が狭間を行き来する。
「サンダルフォン」
背中に熱が触れ、重みがかかる。
体を開かれ、無意識に息を詰めた。
「あ、ぁ……」
「はぁ、ごめんね、止まれない」
ずるずると体内に納まっていく質量が苦しい。
慣れたと思っても圧迫感から逃れられない。
ラグをひっかき、長い挿入に耐える。
まるで肉食獣が味わうようだ、と過去に何度も思った。
じわじわと喰われていく。
「はぁ、あぁっ」
「全部入ったよ」
吐息と共に、満足そうな声が聞こえた。
「動くね」
「んんっ」
優しい声を響かせながら、ぐるりと腰を回す。
奥を突かれる度に声が漏れた。
与えられる刺激に、思考も理性も溶かされる。
「……ねぇ、さっき言ったこと覚えてる?」
言葉に記憶を手繰るが、すぐに思い当たらなかった。
「っぁ、あ」
「ね、翼、出して?」
すり、と爪が肩胛骨の辺りをひっかく。
鋭くはないとわかっているのに身が竦む。
「……今、は無理だ」
「何で?いつでもいいって言ったでしょ?」
爪は背骨を撫で、その後を追うように唇でも触れる。
「ほら、サンダルフォン」
促すように歯を立てる。
子犬がじゃれるような仕草に肌が震えた。
「っぁう」
皮膚がひきつり、駄目だと思うのに制御できなかった。
ばさりと音を立て、褐色の翼が広がる。
サンダルフォンにとってそれは、とても醜く、恥ずべき象徴であった。
グランとは違う。
完全に変化できない出来損ないだと突きつけてくる。
いっそこの翼すらなければ、ただの人として生きられたのに。
「すごい、今ぎゅって締まったよ、気持ちいい?」
翼の付け根をなぞり、羽毛に指先を埋める。
被毛に触れたときのサンダルフォンと同じように、うっとりとした表情で。
「ぁ、ちがう」
「違うの?」
体の震えは自覚する。
中に納めたそれを搾り取るように蠢くのも。
だがそれが快楽かと言われるとわからない。
「本当?」
腰を掴む手が前に回り、性器に触れる。
張りつめ、もう少しで達することができる。
「こんななのに?」
扱かれればぐちゅりと音を立てた。
「ぁ、待っ、グラン」
肌がぶつかり、深く交わる。
容赦なく突かれ、絶頂へと向かう。
「ねぇ、気持ちいい?サンダルフォン」
問いかけは毒のように回り、口を開かせる。
「ぁ、きもち、いいっ……」
言葉が引き金になったように、掌に精を吐き出す。
ぎゅっと締め付けるがグランはまだ達していない。
「は、ぁぁっ」
狭まった箇所を穿たれる。
深い快楽から逃れられない。
「ッ、サンダルフォン」
上擦るその声は、年下らしくかわいいと思えた。
体に両腕が回り、ラグにぐっと体を押しつけて。
「あぁ、僕の天使」
翼の骨が軋むほど、強く抱きしめられる。
長く続く射精に目を閉じた。


どさりと二人揃ってラグの上に転がる。
翼を出したままでは体勢を変えられないので途中で消していた。
「はぁぁぁぁー……」
横から深いため息が聞こえ、今更ながら申し訳なさがわき起こる。
「悪かった」
絞り出した声は掠れていて、ちらりとこちらに視線が向けられた。
「嫌だっただろう。触らせてくれと言ったのも……」
「別に嫌じゃないよ」
ほんの少し笑い、サンダルフォンの頬にかかる髪を梳いていく。
「でもちょっと困るかな」
「……悪い」
「ふふ、うん、たまにならいいよ。僕も無理させてごめんね?」
宥めるように額や頬に唇を寄せる。
服で見えない場所には軽く歯を立てられた。
「俺も、無理はしていない」
「そっか、じゃあまたしようね?」
「え?」
何を、と問う前に脱いだシャツで汚れを拭われる。
体力が違うのか、グランはさっと立ち上がった。
「シャワー浴びて、ご飯にしよう?動ける?」
背中の骨がまだ少し軋む気がするが、動けないほどではない。
差し出された手に触れれば温かくて。
「グラン」
自分が与えられてばかりだから。
そっと口付けを返した。

text