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不思議なことは山ほどある。
二千年過ごしても、知らぬことがあるように。
魔物討伐の依頼を受け、入った古い建造物。
何かの術か罠が発動し、気付けばサンダルフォンは体を拘束されていた。
上半身と下半身を分けるように、腰の辺りが壁に埋まっている。
何とも間抜けな状態だ。
一緒にいたはずの団員がこの場にいないので、助けを待つしかないらしい。
そして、横に。
「サンディも尻丸出し?是非お目にかかりたいね」
上機嫌なベリアルがいることも。
予期せぬ不思議な出来事であった。
同じく身動きが取れないのに楽しげなのが気に障る。
もしや仕組まれたのか、と思うがそれならば目の前に立って色々仕掛けてきそうだ。
問いかけははぐらかされ、口を開けば神経を逆なでする発言しかしない。
聞き流しながら脱出方法を考えていると。
「サンダルフォン……?」
分厚いと思った壁の向こうから、声が聞こえてきた。
「っ、グラン!」
できれば前方から来て欲しかった。
救助に来てくれたのだ、そこまで願うのは贅沢すぎるだろうか。
「え、ベリアルもいるの?」
「久しぶりだな特異点、こんな格好で失礼……」
パシーン、と響いた音に驚いた。
同じ音が二回三回と続く。
はっと横を見れば、にたりと笑って。
「イイ手付きじゃないか、慣れてるのかな?」
相手は誰かな。
「横で変なプレイをするな」
「おや、拗ねてるのかい?」
「そんなわけ」
布をめくられる感触に、ぎくりとした。
無防備に晒しているのだと思い出す。
太股を撫でてから、臀部の形を確かめるように掌が貼り付く。
きゅっと唇を噛んだ。
うっかりすると妙な声が漏れそうになる。
執拗で、触れるというよりは揉むといった方が正しい。
「どうしたのかなサンディ、顔が赤いじゃないか」
からかうような笑い方は、何が起こっているか見透かしているようで。
顔を逸らすことしかできなかった。
その間も掌は自由に動き、あちらこちらへと触れる。
「……おい、やめろグラン」
ようやく絞り出した声が掠れてしまう。
「だって普段触らせてくれないじゃないか」
「へぇ、キミたちそんな関係だったんだ?」
「妙なことを言うな」
どうすればこの拷問のような時間が終わるのだ。
命の危険がないと判断しているのか、グランが救助してくれる可能性は薄い。
ベリアルもこの状況を楽しんでいるだろう。
しょうがないと腹を括る。
「グラン」
名を呼び、脚を絡めるように動かす。
すり、とふくらはぎを擦り付けた。
「ぁ、サンダルフォン」
「それじゃ物足りないだろう?」
腰を揺らし、誘うような言葉を投げる。
「ショータイムならちゃんと見せてくれよ、今出るからちょっと待ってくれ」
抜け出せるならさっさとどうにかしろと思うが、今はそれどころではない。
身を寄せたのを感じながら、見当をつけ踵で思い切り蹴った。
ごつり、と嫌な音が響く。
「っぅ、ぐぅぅ……」
呻きながら体が離れていき、倒れ込むような気配。
多少可哀想な気もしたが、見せ物になる気もなかった。
「容赦ないなサンディ」
「うるさい、出られるならさっさと出ればいいだろう」
「いやちょっと厳しいかもね」
とんとん、と示す壁はやはり分厚い。
何か魔力もかかっているかもしれない。
他の誰かの助けも望めそうにない。
それならば。
「俺は俺の力で抜け出す、アインソフ……」
床へ向け、力を放出した。

建物は魔物諸共消滅したとか、しないとか。

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