ファとフェ(年下)がアイドルで担当マネのベリサン。
少しグラ→サンも入っています。

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backstage 01

冷えた珈琲が飲みたい。
そう思ったサンダルフォンは、自動販売機のある休憩スペースに向かっていた。
もう少しというところで、廊下まで響く会話を耳にして足を止める。
「安っぽい商品に興味はないよ、売れたいなら努力しな」
冷ややかな声の主であるベリアルは、担当したグラドルは売れる、という噂のある人物だった。
なので売れたい女性陣が狙っている、というのもまた噂で聞いていた。
自信があったのか、それとも強引にでも迫ったのだろうか。
もっと耳障りの良い言葉で諭すのかと思えば、意外にも辛辣だ。
珈琲を諦め踵を返そうとする前に、ばんっと扉が開き女性が去っていく。
幸い反対へ向かったので気付かれることはなかった。
苛立たしげに響くヒールの音にぞっとする。
「立ち聞きとはイイ趣味だな?」
「廊下まで響くような声で話す方が悪い」
小銭を入れ、目当ての飲み物をようやく手にし、扉に寄りかかる男に視線を向ける。
久しぶりに見る気がした。
「帰ってたんだな」
海外での撮影に同行していたのではなかったか。
帰国予定は数日先だった気がする。
「終わったからな、先に帰ってきた。で、仕事してさっさと帰りたいのに今の相手してたんだぜ」
疲労の滲む声音にうっかり笑ってしまう。
普段の余裕ぶった姿とは少し違う。
少しくらい労っても良いかもしれない、と思った。
「今日のレッスンで撮った写真見るか?動画もあるけど」
「え?見る見る、どれ」
胸ポケットから社用のスマートフォンを取り出せば、背後から覗き込む。
目的のフォルダを開いて手渡せば。
「サンディ、オレも同じの」
とだけ言い、元の部屋へと戻っていった。
再び小銭を入れて同じ物を購入する。
サンダルフォンも部屋に入れば、真剣な眼差しで画面を見つめていた。
デビュー前の双子で、将来の稼ぎ頭になるだろうと期待されている。
近く担当になるのはベリアルだろう、とも。
「サンディさぁ、センスないのに写真は結構上手いよな」
失礼な物言いだが、滅多にない褒め言葉にカッと頬が熱くなる。
ごまかすように相手の額に缶をぶつければ、楽しげに笑われて。
「コレのお礼してやるから、今日は家おいで」
するりと、指を撫でながらそう囁いた。


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