backstage 03
わぁ、と会場が歓声に包まれる。
コンサート中盤、MCに移行するため音楽は途切れていた。
花道にいた二人は手を振りながらメインステージへと戻っていく。
きゃあきゃあと。
目の前を通り過ぎた場所からひときわ大きな声が挙がる。
スクリーンにはゆっくりと歩く姿が映っていた。
そしてメインステージに辿り付き、端に用意されていたタオルとドリンクを手にした。
その頃には歓声は収まり、二人が何を話すのか、と期待に満ちた眼差しを向けている。
第一声は何か、と。
それなのに。
「ちょっと待って何で喋ってな」
「イイじゃん、おもしろいから放っておこうぜ」
ステージ裏、今にもマイクに向かって指示を出しそうなサンダルフォンを、ベリアルが背後から抱きしめ動きを封じる。
ついでに口も掌で覆った。
機材の前に座るスタッフは、にやりと笑ったベリアルに従う。
知ってた!と思いながらもベリアルの腕の中でもがいた。
画面には汗を拭い、衣装を脱ぐルシファーが映る。
その瞬間の悲鳴が、その日一番だったかもしれない。
けれどサンダルフォンにとっては。
そのタオルもTシャツも物販してますよ!って宣伝するとこだから!
言えば更に売れ売れだから!
何か喋って!と念じるが通じるわけもなく。
ルシファーは淡々と着替え、ちらりと辺り見て、ベルトに手をかけた。
再び悲鳴が響く。
「あっは、マジかファーさん、脱ぐの?」
笑うベリアルの力が緩んだ隙に抜け出し、マイクに向かって叫んだ。
「喋って!」
ともすれば泣き出しそうな声が、ようやく届いて。
『友よ、それはいけないと思う』
それが、MC第一声となった。