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backstage 04

キャップとマスクに、伊達メガネ。
どこで誰に見られているかわからないので、舞台仕事を終えたグランは軽く変装している。
「良かった間に合った」
駅前、スーツ姿のサンダルフォンを見つけほっとした。
「別に俺は待たせても構わないから急がなくていい」
早く会いたかったんだ、とは言葉にならなかった。
デビュー当時、グランのマネージャーをしていたのがサンダルフォンだった。
サンダルフォンにとっても、専属で担当を持つのは初めてで、互いに手探りで活動していった。
それもあって忘れられない思い出も多い。
双子アイドルがデビューする際に担当が外れたが、年が近いこともあり、今でも度々食事に行く仲だった。
他の誰かにできない相談も、サンダルフォンには話すことができる。
二人で入った半個室の居酒屋で、向かい合ってビールで乾杯をした。
好みもわかっているので料理を頼み、落ち着いたところで話すのは主にグランの仕事、今出演している舞台についてが多かった。
そして、酔ってくると。
「いいか、グラン。スキャンダルは起こすなよ、絶対に」
くどくどくどくど、何度も何度も繰り返し言われてきた。
「僕そんなに信用ない?」
苦笑して、レモンサワーをごくりと飲んだ。
「君はお人好しだから、誘われたらほいほいついて行きそうで心配なんだ」
ともすれば聞き流してしまいそうな小言だが、心配している、と言われればすんなりと聞くことができた。
彼の心に存在していることに安堵する。
実際に、食事会などへ呼ばれても不用意に女性と近づかないようにしているし、深酒などもしない。
それらは全て、サンダルフォンの言葉に従っているところが大きい。
本人に告げるつもりはないけれど。
常ならば、わかっているよ大丈夫、と返すところだった。
しかし、この日はグランも少し酔っていた。
明日の予定は夜公演のみで、午前中は久しぶりにゆっくりできる。
心配だ、とはっきり言われちょっと浮かれもした。
「どうせならサンダルフォンとスキャンダルしたいな」
じっと瞳を見つめて告げた。
冗談ではない声音で。
「だからスキャンダルは起こすなと言っているだろう」
しかし、帰ってきたのは何も伝わっていない真顔で。
「デスヨネー」
グランの一世一代の告白は、失敗に終わった。

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