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backstage 05

十周年となる今年は節目の年だった。
アルバムや写真集など発売された物も多い。
コンサートを主軸に、近年行っていなかった握手会なども開催した。
デビュー当時からのファンは子供の成長を見守るような気持ちだっただろう。
マネージャーであるサンダルフォンもファンと同じように感じている。
自分よりも背の低かった子供が、今では見上げるほどだ。
感慨深いものがある。
もう一人のマネージャーであるベリアルは昇進し、現場を離れてもおかしくないのだけれど。
ルシファーの担当が務まる後任が一人としていなかった。
そのため、未だに現場へと出向いている。
そして最終日、最後の曲は十年分の思いを込めました、というバラードだ。
二人で作詞作曲、というファンが喜ぶ代物。
静まりかえった会場に、ルシファーが弾くピアノの繊細な音が響く。
スクリーンには横顔が映し出され、その姿を見つめるルシフェルは穏やかに微笑んでいた。
観客の持つペンライトで客席が青く染まる。
これはきっと、彼らが羽ばたく空の色で。
節目を迎え、人気もある。
それぞれ個人の仕事も多く、忙しい日々を過ごしていた。
幼かった子供はもういない。
この手から飛び立っていくのだろう。
「サンディ、そこ邪魔だよ」
ぐい、と腕を掴んで引き寄せられる。
ほろりと、リハーサルから堪えていた涙が零れ落ちた。
横を通り抜けようとしたスタッフが驚いた顔をしたが、足早に去っていく。
「だって、もう、最後で」
言葉にしようとすれば、涙は止まらなくなった。
分厚い胸に顔を押しつける。
シャツはどこぞの高級ブランドだろうが構わずに涙と鼻水を拭う。
耳には二人の歌声と、サンダルフォンと同じように泣くファンの声が聞こえた。
「終わった気になってるとこ悪いけど、この後打ち上げだからな?」
「うぅぅ、わかってる」
「来年もあるからな」
ぽんぽんと肩も叩かれ、まるでそれが励ますようで、らしくない言動に笑ってしまう。
随分長く共にいて、馴染んでしまったらしい。

その後、ルシフェルが二人の姿を見て絶望の淵に沈むことを、サンダルフォンはまだ知らない。


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