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狼と梟 06

サンダルフォンは少し、抜けている。
それがグランは愛しくもあるが、憎くもあった。
今も、まさにそうだ。
おかえり、と出迎えれば、他人の気配を纏って帰宅した。
最近なかったことを思い出し、舌打ちしそうになるのをこらえる。
「グラン?」
戸惑う声に、ちらりと視線を向ける。
どこで気付くだろうかと思いながら。
肩の辺りを手で払う。
首元に顔を埋めれば、はっとしたように体が強ばった。
「待ってくれ、グラン」
「何を?」
鬱陶しいぐらいの甘い香りに苛立つ。
肌を舐め、服でも髪でも隠れない場所に歯を立てた。
息を飲む気配に満足する。
それはもう、どうしようもない獣の本能だった。
サンダルフォンは自分の物だ、と。
他人に奪われるなど許さない。
そんな理性の欠片もない感情を、サンダルフォンには知られたくない。
それなのに、白い肌に滲む赤に、更なる激情がわき起こる。
「グラン」
その、震える声は抑止にはならない。
「ねぇサンダルフォン、覚えておいて?」
いくらでも言葉と態度で示そう。
「狼は一生でたった一人しか愛さないんだよ」


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