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ルームシェア 03

長い指がくるくるとミカンの皮を剥いていく。
半分に割って一房外し、少しだけ白い筋を取り除いた。
す、と目の前に差し出されたそれを口に含む。
甘くて、少しだけ酸っぱい。
次は自分の口へと放り込み、再び目の前に差し出される。
ぱくりと食べて。
「もうちょっと筋取らない?」
「栄養があるんだ、食べておけ受験生」
言いながら、交互に食べるのを繰り返す。
時折するりと唇を撫でられた。
ほんの少し細くなる瞳にドキドキする。
餌付けされている気分に浸っていると。
「サンディ、オレにもちょーだい」
ニコニコ、いや、ニヤニヤと笑いながら催促する。
言い返すかな、拒否するかな。
反応を伺えば、無言で新たなミカンを手に取りくるくると剥いていった。
ちょっと意外。
「さぁ食え」
ずいっと丸ごと差し出す。
珍しい意趣返しだな、と思ったけれど。
当の本人はやはり、ニヤッと笑って。
ミカンを持つ手首を掴んで固定した。
パクリ、と一口でそれを食べてしまう。
口ってあんなに開くんだと驚いてしまったのは僕だけではなかったらしい。
「お返しにオレも剥いてやるよサンディ」
「自分で剥くからいらん」
「まぁまぁ、遠慮すんなって」
手早くミカンを剥き、仕返しとばかりに丸ごとのそれを口元へ突きつける。
明らかにサイズの大きなそれが容赦ない。
抵抗しようとした手が呆気なく捕まる。
「ほら、あーん」
ぐ、と押し当てられ、観念したように口を開く。
全部入るわけもなく、途中で歯を立てればぽたぽた溢れたと果汁がこたつの上に落ちた。
苦しそうに眉が寄り、それを眺める瞳はとても楽しそうだった。
ここで吐き出したり逃げようとしないから、簡単に遊ばれる理由なんだろうけれど、本人はきっと気付いていない。
呑み込めば残りもぐいぐいと押し込まれ、よからぬ物をほおばったみたいに膨らんでいる。
「可愛いお口だなサンディ」
そう言って、顎を伝う果汁をぺろりと舐めた。
ギリギリと紅い瞳で睨みつけ、手の甲を乱暴に拭う。
かわいいなぁ、なんて思いながら僕もミカンを一つ手に取った。

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