ルームシェア 08
休日の昼下がり、だらだらとこたつの温もりに身を浸しながらグランは微睡んでいた。
勉強は一時休憩だ。
扉の開く音に顔を向けると、サンダルフォンが立っていた。
「一人か?」
問いかけられ、そうだよと返せばキッチンへと入っていく。
冷蔵庫を開ける音がし、すぐに戻ってくる。
角を挟んで横に座ったのでグランも体を起こした。
「あ、さっきまで勉強してて」
広げたノートが目に入り、言い訳のように口にしていた。
見透かすように瞳を細めて笑われる。
「休憩中なら、一つ食べないか」
目の前に置かれたアイスは、餅で包まれた二個入りの物だった。
「え、いいの、食べる食べる」
蓋を開けるのを眺めて気付く。
「それ期間限定のだよね」
「そうか」
答える声は素っ気ない。
確かにそれほどお菓子類が好きなわけではなかった。
食べたくて買ったけど二個は多いのかな、と納得しようとするが腑に落ちない。
「ほら、グラン」
疑問を解決する間もなく目の前に差し出される。
いわゆる、あーん、という状態で。
妙な声が漏れそうになるのを堪え口を開く。
唇に押し当てられたそれはひんやり冷たい。
もぐもぐと咀嚼すれば、にこりと美しく微笑んだ。
「これで君も共犯者だな」
ゴクリと、飲み込む音が妙に大きく響く。
秘密はゴミ箱の底へと隠蔽された。
「オレの雪見ちゃん知らない?」
風呂上がり、肩にタオルをかけたベリアルが問いかける。
「パンツでうろうろするなさっさと服を着ろ」
本を読む手を止め、サンダルフォンが顔をしかめる。
横にいたグランのスマートフォンを持つ手も止まった。
昼間の出来事が脳裏を過ぎる。
しかも同じ位置に座っているから余計意識してしまう。
確認しなかったがやはりそうだったのかと心拍が上がる。
しれっとした表情のサンダルフォンに視線を向けた。
ベリアルが怒るところは見たことがない。
サンダルフォンは度々見かけるが、原因はベリアルのセクハラじみた言動のせいだ。
ほんの少しだけ、どんな姿か見てみたい気持ちになる。
「サンディ知ってる?」
サンダルフォンの後ろに位置するソファに座り、するりと背中を撫でた。
「おいやめろ」
そんな制止が簡単に聞いてもらえるわけもなく。
「ほら素直に言ってごらん」
顎を掴んで引き寄せ、暴れるので腹に脚を回して拘束した。
素早い動きに感心する。
「食べたのはこの口かい?」
顔を覗き込み、唇を撫でる。
その表情は楽しそうで、怒りとはほど遠い気がした。
むしろサンダルフォンの方が今にも噛みつきそうだ。
はらはらと様子を眺めていると、ベリアルがグランに視線を向け口角を上げて笑う。
「グランはイイ子だから違うよな?」
冷ややかな瞳にぞっとする。
こたつは今日も温かい。