ルームシェア 06
洗面台の前にじっと立つサンダルフォンを見つけ、ベリアルは廊下で立ち止まった。
気配を殺して背後に近づく。
外見にあまり頓着のないサンダルフォンが鏡の前にいるのが珍しい。
髪をいじっているのだって寝癖を直す程度しか見たことがなかった。
その手にした物は何だろう、と覗き込んで。
「アナニーでもするのかい?」
耳元で囁けば、おもしろいほどに肩がびくついた。
「するならぜひ観賞させて欲し……って、いた、痛いってサンディ」
手にしていたチューブは、ベリアルが親切心から備えておいたものだ。
未だ使われた痕跡はなかったけれど。
羞恥と怒りとどちらか、耳まで赤くして肘を脇腹に埋めてくる。
「じゃあなに?どうしたの?」
「……手荒れしてて、これも保湿ならいけるかな、って」
予想外の答えに手を掴めば、確かに指先が荒れている。
すり、と撫でればざらついた感触。
「コンビニでハンドクリーム買えば?」
「……確かに。行ってくる」
「いやいやいや」
本当にそのまま出て行きそうな腕をしっかりと掴んだ。
そこまで急を要する問題だとは思わなかった。
いや、そんなものを塗ろうとしていた時点で察するべきだったのか。
サンダルフォンは時々とんでもないことをしでかす。
「ちょっとおいで」
チューブは元の場所へと戻し、掴んだ腕を引けば素直についてきた。
そのまま自室へと入りベッドに座らせる。
「塗るならワセリンにしときな」
容器から掬い取り、指に馴染ませていく。
嫌がるかと思えば意外にも任せてきて。
「サンディはさぁ、匂いしない方がいいよ」
この手は誰に触れるのか、などと考えながら、形よく切りそろえられた爪を撫でた。
「飲食店だしさ」
「あぁ、そうだな」
ベリアルの言葉を信じ込んで、こくりと頷く。
視線は指先に向かったまま。
「なぁ、サンディ」
わき上がる感情は何だろうか。
肩を押せばあっさりとベッドに転がる。
見上げる瞳が瞬いて。
「ついでにセックスでもしておく?」
なんて、無防備で、愛しい。