ルームシェア 10
リビングのソファの上、寝転がるサンダルフォンにぎゅうっと抱きしめられた。
ちらりと顔を見れば、少し疲れているようで。
「好きだよグラン」
響く声に、頬が熱くなる。
幾度聞いても慣れない。
「僕も、好きだよサンダルフォン」
でも、本当は知っている。
その心が誰に傾いているのかを。
寂しさを埋めるように抱きしめられて。
虚しさを感じながら、嬉しいとも思ってしまう。
彼の慰めになればいいと。
他の誰でもなく自分を選んでくれたのなら。
今、抱きしめてくれる腕は本物だから。
「ただいま、ってお邪魔だったかな?」
扉の開く音の後、からかうような声が聞こえた。
ぎゅ、と腕の力が強くなる。
顔を向ければ、楽しげに笑っている。
「おかえり」
反射で声を返せば、軽く笑われて。
「キミはイイ子だな」
くしゃりと髪を撫でられた。
それは意外にも優しい手付きで。
「あ、デザートあるよ」
目の前に見せられた紙袋は、プリンが美味しいと評判の店の物だった。
「……おかえり」
小さく、悔しそうな声が響く。
「くっ、ふふ、ただいまサンディ」
同じように髪を撫でる。
その一瞬、ほんの少し口元が緩む。
嬉しさを堪えるみたいに。
けれどすぐ、その手を振り払った。
「腹減ってるだろ、飯にしようぜ」
「今日のご飯はー?」
知らぬふりをして、明るく声を出す。
腕の力が緩んだので立ち上がり、サンダルフォンの手を引く。
男を追うようにキッチンへと向かへば、夕食のメニューを告げられた。
三人という歪さで、日々は穏やかに過ぎていく。
深く考えることはしない。
何も知らない、そうすれば。
幸せでいられるのだから。